『ラジオ局を作ろう』
小町谷 圭
Kei Komachiya

  
大島中学校
2003/5/17実施

コミュニケーションをなかだちする手段という意味でメディアを考えるといろいろな特性を持ったものがあります。その中で手軽に携帯でき、そして短期的にも長期的にも役立つごくありふれたマス・メディアといったらラジオかもしれません。
われわれが手軽に手にできるこのラジオは一般的には受信機をイメージしますが、もちろん受信機に対して送信機があり、この送信機から受信機に向けて放送が行われているわけです。しかし、双方向メディアではないラジオは情報の上位にたつこと、すなわち放送(情報を提供する側)に関わることは容易ではありません。
ラジオは大きく分けると広域放送、県域放送、コミュニティーFM、ミニFMと種類分けされていて、放送を行うにはほとんどの種類は免許を必要とします。なぜ、免許が必要かというと、それはビジネスになるというだけではなく、放送が権力と結びつく可能性があるからです。つまり、非常に大勢の人々に一度に同じ情報を伝えることが可能なメディアであるからです。
ラジオは口の拡張といわれるように、肉声では届かない範囲にいる多くの人に同じ音の情報を届けることができるわけですが、唯一、免許を必要とせずに放送を行えるミニFMは微弱な電波です。われわれが手にすることのできる口の拡張は、せいぜい100メートルから200メートルほどの小さな範囲ということになります。この小さな自由度を使い、情報を送る側と聞く側を体験できないかと考えました。

かつて、オーソンウェルズが、ラジオドラマで「火星人襲来」を演出し、それがドキュメンタリー・タッチだったため、本当に火星人が襲来したと思い込んだリスナーがパニックを起こしたという事件は有名です。聞き手は音という情報を信じてしまったわけです。そこで音という情報の読み書きを体験してもらおうと思い、ラジオの情報を元に絵を描いてもらうことにしました。
会場は小学校ですから校舎とグランドというロケーションを使うことにしました。描画材はすずらんテープとペグ・方位磁石を用意しました。支持体となるグランドにペグを打ち込み、固定されたペグにすずらんテープをつなげて絵を描いてもらうことをルールにしました。
グランドに描く絵の大きさは20メートル以上のものが原則です。ナスカの地上絵は数キロに及ぶ絵を描いていますが、全貌を見るには飛行機などを使って高い視点を必要とするように、小さな絵ではグランドにいる描き手が描いている最中の絵から視点を通して次の作業を類推してしまうことがあると考え、なるべく避けたかったからです。
出題側は学校の最上階にいるので意図した絵を描いてもらえているのか観察できるという仕組みです。

まず参加者は二班に別れ、お互いが聞き手に意図した絵を描いてもらえれるようにプログラムを考えてもらいます。プログラミングされた出題は自動音声を使い順番に読み上げられ、学校の最上階から送信機でグランドにいる描き手に届けられます。
ラジオから流れる出題の意図を汲み取りながらグランドにいる描き手は行動します。一度考えた出題はもちろん途中で修正することは出来ずに、線的に移行しますから一つ聴き間違えると絵は崩れてしまいます。
あえてメジャーなどの距離を測る道具は用意していません。描き手の中から特定の人物を指名して、その人物の歩幅を利用したりするなど、そういった間違いを誘発するような部分は、工夫をしながら情報の読み書きをしなくてはいけません。出題をまとめる担当者、ペグを打つ担当、指示を出す担当など、二つに分かれた班はグループとして任務を遂行できるように担当を決めたりすることにも意識を向けていました。
一班目の出題は、一度ペグを打つ位置を割り出す作業で基準となるポイントから、方角の指示を間違え、図形が崩れてしまいましたが二班目の出題は、シンプルで意図した図形を聞き手が描くことができました。